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小さなオープンカーで北海道の温泉を巡る、道産子の入湯記録。

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温泉 とっておきの話(鳴海社)



飯島裕一・徳永昭行 編著。2013年10月10日発行です。
甘露寺泰雄氏・阿岸祐幸氏・石川理夫氏の3人による対談を、本にまとめたものとなっています。それぞれが温泉の達人として高名な方々で、この3名が一堂に会し、講演会などでは話せない温泉の話をざっくばらんに語る、というコンセプトに読む前からワクワクしてしまいました。

第1章は「温泉の今昔」。
3名の自己紹介から始まり、日本の温泉の歴史について語っています。温泉学の本でも温泉の歴史については必ず触れられますが、3名とも非常に詳細に語っています。

動物が発見したとされる温泉が多いのはなぜか・「日本書紀」「古事記」「万葉集」などに登場する温泉から、日本における仏教と温泉の関わり・入浴の仕方の移り変わり等々。
これだけで約80ページ。現代へと続く温泉の歴史だけでこんなに語れてしまうのかと驚くほどのページ数です(笑)

第2章は「温泉の効用と魅力」。
ここでは「〇〇泉の効能は〇〇」というお決まりのパターンではなく、一般に温泉に関して使われる「宣伝文句」等が本当なのか、話し合われています。
大正10年ころから使われている「美人の湯」の真相、「子宝の湯」の本当の意味、放射能泉は人体に良いのか悪いのか、かけ流しの温泉であれば良い温泉なのか、温泉分析書に載っている「適応症」の変遷、温泉と泥などなど話題は多岐にわたります。

ネタバレになるので詳しい内容は書けませんが、個人的に記憶に残っているのは・・
・温泉分析書に載っている「適応症」というのは「そこで(2-3週間)温泉療養した場合の適応症」であり、1,2回入浴しただけではその効果は得られない(1,2回の入浴と温泉療養では身体に与える効果が違う)という事

・ヨーロッパでは泥は「ファンゴ」「モール」「シュリック」と明確に区別されて使われているが、日本ではみんな「ファンゴ」になってしまっていて中身が分からない。さらに、十勝川温泉等の「モール温泉」は温泉水に僅かにモールが混ざっている程度のもので、対するヨーロッパの「モール浴」とは田んぼの泥に浸かるようなどろどろのものであるという事実

・同じような泉質の温泉であっても、その場所の緯度・高度によって体に与える効果は変わる。ゆえに温泉の「泉質」だけでなく温泉の環境まで考えた温泉地作りが大切なのだが、日本では泉質ばかりが注目されるためそういう考えは(研究者の間でさえ)ほとんど浸透していない

この章も約80ページほどあり、非常に楽しく読めました。

第3章は「これからの温泉」。
これは最後の20ページほどの短い章です。
温泉は環境とセットで考えるべきものゆえ「温泉地としてどう発展させるべきか」が重要であること、
パンフレットや一部のジャーナリストが使っている温泉の紹介の仕方やかけ流し信仰の問題点など、短くさらっと語られています。

たとえば加水している温泉を「ニセモノの温泉」と呼ぶのは自分勝手で謙虚さがないなど・・北海道でも似たような、思い当たるものがあったりなかったり。

個人的に第1章は大切な内容ながら読んでいて少し長く感じてしまいましたが、第2章以降は面白くてあっという間に読み終えてしまいました。
誰かの受け売りではなく、温泉の歴史を紐解き、温泉がどのように身体に影響を与えるのかを長年日本や海外で実際に研究してきた人だからこそ言える、研究現場の視点からの非常に興味深い話がたくさんあります。
実際に温泉地で働く方にとっても参考になる提言が含まれている、とも感じました。
読み終えてもワクワクする1冊。

定価は1680円です。

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プロフィール

HN:
のん
性別:
男性
職業:
温泉愛好家&温泉ライター。温泉資格:温泉入浴指導員・温泉健康指導士・温泉ソムリエマスター・温泉観光士・温シェルジェ・温泉観光実践士・温泉観光管理士・高齢者入浴アドバイザー。
趣味:
湯。翼。
自己紹介:
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